アウェーで行われたプレーオフラウンド第2戦川崎フロンターレ戦は1−0で勝利。
この試合1-0というスコア以上の意味を持つ、しかし同時に今季の課題を凝縮したような勝利。
前半に中村草太が挙げた値千金のゴールを、後半は文字通り死に物狂いで守り切る形となりましたが、この結果によりチームは怒涛の5連勝を達成。
半年に及んだこの歪な特別リーグを7位という順位で終えることとなりました。
しかし、7位という数字は実質的にただの参考記録、いや「無価値な欺瞞」と吐き捨てても差し支えないでしょう。
東西(EAST/WEST)のリーグ間における圧倒的なチーム力の格差、競技レベルの乖離を考慮すれば、この順位表に一喜一憂すること自体がナンセンスであり、何の意味も持たない数字の羅列に過ぎません。
試合を振り返ると、前半と後半で全く違う試合展開。
前半の戦いぶりに限っていえば、何一つとして非の打ち所がない、文字通りの「完全なるサンフレペース」。
決定力不足という慢性的な病巣は相変わらず顔を覗かせたものの、ピッチ上の強度、連動したコンビネーション、そして選手個々の圧倒的な運動量は、見る者を文字通り魅了する素晴らしいクオリティに達していました。
この完璧な流れの中で先制点を奪い取ったのは、やはりこの男しかいない。
千両役者・中村草太である。松本との極めてシンプルかつ無駄のないワンツーで中央を切り裂き、ここ3試合連続でほぼ既視感すら覚えるまったく同じ角度からネットを揺らした。相手DFからすれば「分かっていても絶対に止められない」のが中村草太の領域であり、これだけの異次元のパフォーマンスを「やって当然」だと思わせるだけの格が、今の彼には備わっています。
振り返れば、今季の前半戦はコンディション不良と戦術的な大不振に喘ぎ、本人にとってもチームにとっても暗黒の時間を過ごした。しかし、後半戦における彼の変貌ぶりはどうだ。中村がピッチに「いるか、いないか」だけで、チームの攻撃力には文字通り雲泥の差が生まれる。
良くも悪くも、彼がこのチームの戦術的核であり、すべての攻撃の引き金を引く絶対的な牽引車であったことは動かしがたい事実です。
しかし、後半の様相は一変。文字通り後がなくなった川崎がなりふり構わず牙を剥いて猛攻を仕掛けてくると、サンフレッチェはただ自陣に押し込まれ、防戦一方の地獄を耐え忍ぶだけの時間を強いられました。この致命的な失速の原因は、中村の交代がすべてを引き起こしたと言っていいでしょう。
もちろん、満身創痍のコンディションを考慮すれば交代自体は妥当な判断ですが、問題はその後に投入された交代選手のクオリティ、とりわけ前田の「絶望的なまでの強度のなさ」。
さらに鈴木の疲労も重なり、前半機能していた前線からのファーストプレスが文字通り「完全消滅」したことが、後半の防戦一方を招いた元凶です。
近頃、ガウル監督は後半のクローザー、あるいは活性化の切り札として木下や前田を投入するシチュエーションを増やしているが、彼らがピッチに登場するたびに、毎試合のように後半の主導権を完全放棄して押し込まれる悪癖が常態化している。
フロントおよび首脳陣は、このような現代サッカーの基準を満たせない強度不足の選手たちを来シーズンどう扱うつもりなのか。厳しい言い方をすれば、新たな血を入れ替えるにしても、前線から果敢に、かつ圧倒的な「強度とスピード」を担保して守備を完遂できるタレントの確保は、来期の最重要命題です。
戦術的な歪みは中盤とサイドにも顕著に現れていました。
今日の松本はボランチとして出色のパフォーマンスを披露していたことは事実ですが、冷静に分析すれば、チームが本気で「タイトル奪還、リーグ優勝」を至上命題に掲げるのであれば、松本をボランチで起用するようなその場しのぎの妥協は即刻やめるべき。
現在、チームはシャドーの人材過多に陥っているが、松本の天賦の才が最も輝くのは間違いなくシャドーのポジションであり、ボランチの底で守備のタスクに追わせるべきではありません。
さらに、ウイングバック(WB)の機能不全にいたっては、もはや「戦術的自殺行為」と言えるほどに明白。
特に左サイドにおける機能不全は目を覆いたくなる惨状であり、ベテランの佐々木が、本来は東が担当すべきタスクまで全て肩代わりし、実質的に「1人2役」をこなさざるを得なかった状況自体が完全に異常事態です。
東のプレーは攻守において常に相手の後手に回り、すべてのアクションが一歩、二歩と出遅れている印象が否めません。
致命的なほどにスピードと強度が足りていません。ビルドアップ能力を評価する声もありますが、本日の佐々木が見せた超一級品のビルドアップとチャンスメイクに比べれば、東のそれなど足元にも及ばない。
満身創痍の佐々木が左サイドの守備を完璧にこなしながら前線へ決定的なパスを供給し続ける姿の横で、WBのポジションを形骸化させていた東自身は、己の存在意義を揺るがすこの残酷な現実をどう受け止めているのだろうか。
右の新井に関しては、中野との補完関係によって何度も右サイドを崩し、決定機を創出していたものの、チーム全体を俯瞰すれば、長年擦り切れるまで使い古してきた「3バックシステム」の構造的な限界はとうに臨界点を迎えています。
来シーズン、戦えるチームへと脱皮するために必要な補強ポイントはあまりにも明確。
現代サッカーに適合できる、圧倒的な強度と卓越した展開力を兼ね備えた実力派ボランチを最低でも2人以上。
もし頑なに3バックを継続するのであれば、自力でボールを自陣から運び、圧倒的な推進力と縦への突破力で局面を打開できる一線級のウイングバックを最低でも2人は絶対に補強しなければ話になりません。
逆に言えば、このボランチとウイングバックの壊滅的なポジションに的確な実力者を補強できるのであれば、飽和状態にある前線の攻撃陣に関しては、これ以上の無理な買い漁りは不要であり、余剰戦力の整理(人員整理)だけで事足りる。
個人的な見解を述べれば、前線のワントップ・ツーシャドーのユニットとして、鈴木、中村、加藤、そしてジャーメインの4名は「何が何でも絶対に死守すべき不可欠な核心」だと考えます。
ここに、前線で泥臭く身体を張ってボールを収め、個の力で強引に仕掛けられる強力な外国籍籍選手が1人加われば、それで前線のアタックパーツは完成すると思います。
決定力不足が目に余るとはいえ、ピッチ上の構造を解剖すれば、ボランチの絶対的な層の薄さや、ウイングバックを安心して任せられるJ1基準の専門職が「誰一人として存在しない」という現在進行形の地獄に比べれば、前線の決定力不足など些末な問題に過ぎません。
松本や川辺といったタレントも、その本質的な適性はシャドーにあると思います。中村草太の将来的な海外移籍というリスクを織り込んだとしても、適性のない選手をコンバートして誤魔化し続けるくらいなら、これ以上前線のカードを闇雲に増やす必要性は極めて薄いでしょう。
一方で、守備陣に関してはほぼ「盤石」と評していい安定感を誇っています。
皮肉にも荒木の負傷という「怪我の功名」が生んだ形にはなったが、山﨑の爆発的な急成長は、チームにおけるDFラインの選択肢を劇的に広げる結果となりました。
だからこそ、以前から幾度となく主張しているように、今こそシステムを「4バック」へと舵を切り、荒木と山﨑による極めて強固なセンターバックコンビを結成させるべきだと確信しています。
4バックであれば、サイドバックには中野やキムジュソンといった実力派の選択肢が並び、現状WBでは限界を露呈している東であっても、一列下がったサイドバックの位置からであれば、まだそのプレースタイルに再生の可能性を見出せるはず。
佐々木や塩谷といった、これまでチームを支え続けてきた偉大なベテランたちの肉体的な衰えは隠しようがない。彼らを休ませながら、ここぞという大一番で最大のパフォーマンスを発揮させるマネジメントへと移行するためにも、ガウル監督が一体いつ、この「4バックへのシステム移行」という絶対的な決断を下すのか、来季の指揮官の戦術眼に注目したいところですね。
激動の半年間に及んだ特別リーグが幕を閉じ、休む間もなく新シーズンへのカウントダウンが始まる。今、胸中にあるのは、来期への膨れ上がるような期待感。
思えば、特別リーグの前半戦、ミヒャエル・スキッベ前監督の遺産をただなぞるだけの、何のクリエイティビティもない「焼き回しサッカー」をピッチ上で見せつけられた時は、あまりの絶望感にガウル監督の指揮官としての技量、あるいはその資質を根本から疑いました。しかし、まさかこの短期間で、ここまでチームの戦術的ベースを底上げし、戦える集団へと変貌させてくるとは夢にも思いませんでした。
近年のサンフレッチェは、他チームがやっているごく「当たり前の約束事」すらピッチ上で体現できなくなり、ここ数シーズンに至っては、お世辞にも「プロのサッカー」と呼ぶことすら烏滸がましい、目を覆いたくなるようなクソサッカーを垂れ流し続けていました。
その泥沼のチームが、わずか半年間で、誰もが納得する「普通の、いやそれ以上に質の高いサッカー」と呼べるレベルへとパフォーマンスを昇華させたこと自体、ガウル監督が起こしたフットボール界の奇跡です。
さあ、現場(監督と選手)は地獄のような半年間でこれ以上ない最高の結果と可能性を示した。ここから先は、フロントがその重い腰を上げ、命を懸けて仕事を完遂する番でしょう。
これ以上、チームの戦術コンセプトを無視したチグハグな補強は許されない。特に、近年の外国籍選手のスカウティングに関しては、言葉を選ばずに言えば「同じ過ちを何度も何度も繰り返す、目も当てられない大失態」の連続。
もういい加減、フロントの無能さで現場の足を引っ張るのはやめるべき。シーズンを通してフル稼働し、ピッチ上で絶対的な違いを作り出せる本物のトップタレントを連れてくること。それだけが、この奇跡の続きを願う全てのサポーターに対する、フロントの最低限の義務を果たすべきでしょう。
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